コウモリが見たくなった。陽が沈みかけた頃、神社の鳥居をくぐってあっという間に空に消えてく黒い群れを見たくなった。ドクダミを手に取って歩いた野道の片隅で笑顔を見せたあなたの歯並びの悪い横顔、を思い出した。
子供なりの葛藤に臆することない、目の前の飴に左右されないあなたの強さに憧れていた。こぼれた涙をぬぐわずに黙々歩いた夕暮れを、最後の最後まで直視できなかったあなたの泣いた顔を、僕は今、自分勝手に想像している。
やっと帰ってきた神社の前で、僕の家とあなたの家の分岐点の所で、別れ際に見たコウモリを思い返している。
コウモリが見たくなった。
よしろー